Diary

生きてる

砂の女を読みました

 

砂の女 (新潮文庫)

砂の女 (新潮文庫)

 

 

安部公房の作品を初めて読みました。多彩な比喩表現と引き込まれてしまう不思議で恐ろしい世界観、ハラハラしながら読みきりましたが、読了後は鬱というよりも「人の一生ってこんなもんなんだろうな…」と諦めのほうがどっと押し寄せてきました。

主人公は理不尽にも砂の穴の中にとらわれ、なんとか脱出しようと何度も脱出を試みるが、幾度も失敗し、次第に最初の強かった目標も絶望を彷徨う中で失われ、終いには閉じ込められていないのに出ていかない男のできあがり。

これは心理学のひとつの有名な学習性無力感(長期にわたってストレスの回避困難な環境に置かれた人や動物は、その状況から逃れようとする努力すら行わなくなるという現象)を砂の穴に閉じ込めた男にやらせた、という感じですね。

「砂」という私達の身近にある当たり前のものをこうも読者に「不快感」「嫌悪感」を押し付けてきたのはすごいと思います。全てにおいて清潔感がなく、ただ、ただ不潔。全ての食事や水が部落のじいさんが持ってくるもの。日差しが照りつける中、汗水たらして達成感もない砂を掘り、その汗には砂がこびりつく。食事は砂が入るので女が傘をさしながら食す………なんだこの砂地獄は?

 最初こそ当たり前に抵抗を見せる男も次第に無意味な砂掘りにも仕事としての達成感を感じ、お金を貯めてラジオを購入したりもする。何かを買うって買った幸福感に包まれる未来に期待してるから買うんだなぁと思った。

タイトルが「砂の女」だからどれだけ不気味な女が出て来るんだろうと思っていたらただ、砂に住む無知な女だった。拍子抜けとかそういうのではなく、無知だからこその怖さというか、力強さがある。砂の中での女は無敵なんだな、と。

色々考察しがいがありそうな作品でした。